2013官製ワープア川柳報告

 東京での大会と同様に大阪でも川柳を公募したが、短期間であったにもかかわらず、53名の方から223句もの投稿をいただいた。
 2008年にレイバーネットが始めた「ワーキングプア川柳」のご縁で、今回は私が選者を務めさせてもらった。

 以下、集会の報告というよりは、当日私がお話をした内容の概略と入選作の報告である。

 まず、今回集まった作品の特徴を概観した。
1.全体に自由吟のほうが秀句が多かった。テーマ吟は切実すぎたのかもしれない。怒りを直接ぶつけた句もあったが、共感がないと読者に通じない。川柳は共感の文芸だから。

2.似た句が多い。思いつきでできた句は、他の人も思いつく。簡単にできた句は疑ってみること。啄木「働けど‥‥じっと手を見る」に想を得た句が7句。「倍返し」は3句あった。流行の言葉を使うのはよいが、独自性をどう出すか。

3.時事句の場合、政治意識の高い人はとくに一方的な主張、スローガン、標語を作ってしまいやすい。単純な説明になっている句も多い。聞いて「あぁそうですか」しか反応できない川柳を「そうですか川柳」という。

4.定型を守っていない句がある。川柳は五七五のリズムが大事。字足らず、字余りはよほどの必然性がないとよい句にはならない。特に初心者は定型を守るべきだろう。

 ということで入選句の発表。
 スタッフが入選句を巻物の形に作ってくれて、面白いパフォーマンスになった。
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 以下発表順に佳作5句(順位はなし)と人→地→天を。

《佳作》
◆ 粗食でも妻の料理に偽装無い       カツジィー
今時珍しい夫婦愛。貧しさを卑下するのではなく、逆に偽りのなさを褒めている。夫婦円満の秘訣か。料理ができない男の作戦かも。

◆ やる気あり資格もあるが職が無い     世直士
前半でトントンと運んで、下五の「職がない」で落とすという川柳の技。深刻な状況なのにそこはかとないユーモア。

◆ 貧しさが繋ぎ止めてる夫婦仲       トライ明日論
昔は子は鎹と言った。貧しさが鎹となっている現代。なるほどと思わせる。一人口は食えぬが二人口は食えるということか。

◆ 億ションのチラシあばら屋にも届く    トライ明日論
宣伝だけは貧乏人にも届けられるというアイロニーとユーモア。番傘の岸本水府の句、「金もなく朝日まばゆき家に住み」を彷彿とさせる。

◆ 年賀状買えず欠礼いたします       ぶらっく
単に年賀状が買えないから出さない、と理解しては面白くも何ともない。金もないのに「欠礼いたします」とハガキを出しているナンセンスが面白い。

《人》
◆ 上っ張り着る気はないがなぜくれぬ    東
正規非正規の不公平を、直接的な言葉を一つも使わず「上っ張り」に託してうまく表現した。しかも「着る気はないが」と自らの矜持は捨てていない。

《地》
◆ 安売りに作った人の涙見る        ぶらっく
安いものを買う、安いものでやりくりするという句はたくさんあったが、その「安いもの」を作っている人のことに想いを馳せた句はこれ一句。100均で「なんでこんなに安いの」と喜ぶ自分がいる反面、ふとアジアのどこかでこれを作っている貧しい人のことが思いやられる。

《天》
◆ 安全な国に生きてる不安感        クジラ
いわゆる安全を売り物にしてきた日本。原発然り、食品然り。建前では安全は揺るぎないもののようだが庶民はそこに不安を感じている。安全と言われれば言われるほど不安が募る今日の状況を「安全」と「不安」を対比してうまく表している。
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残り時間で、入選はしなかったが惜しい句について、どう直せばよい句になるかを簡単に説明した(時間切れで説明しきれなかったものも含む)。

◆ 時給より高くかかった証明写真
下五が七になって、リズムを壊している。「かかった」も必要性はない。→時給より高い証明写真撮り

◆ 父母を思う清貧と言う言葉
中七であるべきところが八で、やはりリズムが悪い。→父母を思う清貧なる言葉

◆ 非正規はあなたが悪いわけじゃない
呼びかけている句なのに「非正規は」と言うことで平板になってしまった。熱っぽく呼びかけている句にしたい。→非正規よあなたが悪いわけじゃない

◆ 給料があまりに安いも詐欺のうち
「安いのも」と言うべきところを無理している。形容詞を名詞化してみる。→給料のあまりの安さ詐欺のうち

◆ 学校はいまフリーター養成所
着想は面白いのに、「AはBである」という形であるため説明文になってしまった。ここは発想をガラッと変える必要があるだろう。例えば、→フリーター産んだ母校を仰ぎ見る

以上(報告:正木斗周)

※「なくそう!官製ワーキングプア 大阪集会」の総合報告はこちら