11/5「初心者勉強会 川柳で思いや考えを伝えたい! 」報告

講師:植竹団扇(川柳マガジンクラブ東京句会世話人)

 川柳をつくるにあたって後世にまで伝えられる句を作りたいが、川柳作家として名を残すのではなくて、句が残っていくことを目指したい。
 普通の日常を、出来事を吐いていく。その中に政治もあるということだ。
 というお話から始まった川柳勉強会は、各自が持ち寄った自分の句や気になる句の講評から始まった。

持参句講評
1、庭先で猪暴れるTPP                  おおとり
 中八下六の句になっている。中八は自分としてはとらない。なるべく避けるように。下六は、それほど神経質にならなくてもいい。
2、これからはメードインジャパンが殺戮す        白眞弓
 「これから」「あれ」「それ」などは避けた方がいい。
3、こちらでは誰が操るアベマリオ             なずな
 「こちら」も避ける。「日本では」にしたらいい。
4、いらいらが支持率あげる末期国             一志
 「末期国」と言ういい方はないのでは? 通常使われている言葉を使う。自分がこう読ませたいと思っても、ふりがなを振ってはいけない。読む人をばかにしているともいえるので、選者(読む人)に任せる。
 耳で聞いてわかる、話してわかる言葉で句をつくるように。
5、訪れた発祥の地も暑い夏                わかち愛
 これは、川柳の吟行をしたときの選句で「天」になったがなぜなったのかよくわからないとの作者の質問。
 選者が一緒に行動し、暑さに共感したのではないか。こういうことは、よくあること。
6、南スーダン死は数弾をもって足る            乱鬼龍
 「数弾」とはあまり言わない。スーダンにかけたのだろう。駄洒落川柳というのもある。
7、人さまも疑似餌に釣られ魚笑い             おおとり
 人さまの「さま」は「人」を皮肉ったのですね。
8、赤い糸悪運だけが結びつく               のら
 「悪運」は悪縁の方がいいですね。
 赤い糸は男女の仲、この言葉を使った句は五万とあるので、いかに違いを出すか。
9、与野党にケンカ上手がいなくなり            乱鬼龍
 「いなくなり」を「見当たらず」にするのもいい。
10、干物になる日も近いね日本人             白眞弓
 八九の句(上句八、下句九)。水道の民営化をいっているのだが、八九の句と分かりにくかった。
 九八という句もありなので、試みに作るのは勉強になる。
11、加害者が水に流せと火を注ぎ             混沌
 「注ぎ」は、火には使わないのでは?と議論になった句。「火を」を「火に」とすればリズムもよくなるし、いいのでは?
 「注ぎ」と連用止めになっているが、気にしなくてよい。句の中味に関係なく、どっちかな?と何度も声を出して読んで、決めるといい。
12、内地では命も対比無関心               温空
 「対比」を使う意味が分からない。「命も対比」がこなれていないので、もう一工夫を。
13、口目耳法の支配で縛り付け              おおとり
 「支配」にはすでに「縛り付ける」意味があるから二重になるので、「法の支配」をかえるといい。「口目耳」は、縛れるものではない。
 思いがあふれているが、薄めてサラッと言うといい。
14、豊洲のウラで朝高イジメ                なずな
 小池は知事になって4日後に、朝鮮学校に助成をしないといったこと。豊洲で華々しいのに裏で隠れて悪いことをしている。
 「朝高」の意味が分からない人もいるのでは?
 これは七七句である。
 七七句は、上、下句の7を分解すると以下のようになる。
上7 3-4、4-3、2-5、5-2
下7 3-4、4-3、2-5、5-2
 上句、下句は、どの組み合わせてもいいのだが、下7の2番目の4-3の組み合わせはタブーになっている。
15、オレオレもあきれてしまう五輪サギ          織淳
 「おれおれ詐欺」と比べてのこと。サギをカタカナ表記にしたことに質問が出た。それは、本人が決めればいいということだ。
16、ふざけるな女は前から非正規だ            壱花花
 以前のレイバーネットフェスタで公募したとき、人気のあった句だが、一ひねりした方がいいと思ったがどうかとの質問。
 「保育園落ちた日本死ね」の対句になる句といえる。男性の非正規が出てきて社会問題化してきたが、女性は以前から……という句。2008年だから出て来たのであって、時代の記録として落としてはいけない句。
句全体の形で良い悪いはいえないし、命令形が悪いわけではない。時代性も大事。
 例えば、
慣れてなどなるものか仮設の暮らし
 は、時代を記録する。
17、誕生時美人の運を持ってこず             のら
 面白いけど「誕生時」といういい方はないので、工夫を。
 (「美人の運」から発想して)「美人の湯」の句はたくさんあるが、どう区別化するかが問題。一生に一度は作ってほしい題。
 団扇さんの句。2句目は正確には美人の湯の句ではないが……。
美人の湯信じるものは救われる
もしあれば行ってみたいな美男の湯
18、沈黙の満員電車に渦巻く怒り             織淳
 中八になっているので、「に」をトルといい。
 昔から句のできる場所は、「馬上・寝床・厠」といわれている。電車の中も句のできるところ。
19、この坂は胸突き八丁欅坂               乱鬼龍
 欅坂46のナチス親衛隊の軍服のようだと、異議があった。しゃれでこのことを指摘している。もともと欅坂46は軍服で売り出したグループである。
テロリスト紛れてるかもハロウィーン
 という句もある。
20、あの時の間違えをまたおしつけて           温空
 間違え、間違い どちらが正しいか。辞書で確かめるように。
 先の大戦の間違えを言っているのか、江戸時代の開国のことか。「あの」はよくない。作者は沖縄のことを言いたい。それなら、「匂わせる」手もある。たとえば方言を入れるとか。
※記録者注
 「間違え」も「間違い」も、どちらも名詞で正解です。「間違え」→他動詞の「間違える」、「間違い」→自動詞の「間違う」の連用形が名詞化したもの。

21、平和だって?嘘福島も沖縄も              白眞弓
 「?」をどうするか。必然があれば、使ってもいい。
 「はっ」「ふと」などはダメという人もいるが、タブーをつくってはいけない。

◆席題「酒」
・ひとり酒若い女性の飲みっぷり               わかち愛
 絵がある作者の驚きがある。想像句か?
・大型店便利が良いと町は過疎                おおとり
 酒がない。
・酔ったのか天井まわる震度四                織淳
 説明的。震度三の方がよかったか。
・大統領どっち勝っても焼酒に                一志
 焼け酒と「け」を振った方がいい。
・シラフとは思えぬほどに安倍が吠え             乱鬼龍
・非正規で笑顔絶えない居酒屋で               混沌
 ブラックな雇用でもマニュアルで笑顔をつくらされている。酔えない。
・依存症酒と縁切れ忘年会                  のら
・アメリカの美酒に酔いしれ滅びゆく             白眞弓
・何時までや松井も安倍も泥酔し               温空
 「泥酔し」は「名詞+し」で「し止め」といい、これは避ける。
・あのニュースあてにもならん悪酔いし            温空
 「悪酔いし」もし止め。「悪酔いする」にしたら。
 「あの」では何かわからない。独りよがりでは、相手に伝わらない。

◆まとめ的なもの
◎「こういう句がいい」などと抽象的には言えない
◎互選すると自分の思いと同じものに票が入る(必ずしも秀句ではない)
◎川柳として何をどう表現するかが大事で、それがなければ文芸にならない
 「安倍さんが怒って…」とストレートにいうより、「言われてしまったなぁ」と思えるのがいい句
◎自分と仲間はわかるけれど……という句は避ける
◎思いがあふれるよりサラッと薄める方が伝わる
◎句の持つ時代性も大事
◎耳で聞いてわかる、話してわかる言葉で句をつくるように
◎読み方の指示をしない。読む人に任せる
◎川柳は、基本的に分かち書きをしない。開ける時は意味のあるときのみ
◎これはダメとかタブーをつくってはいけない
 ?、!、「ハッと」、「フッと」など、必然があれば、使ってもいい。なくてもいい場合は、使わない
◎これから、こちら、あっち、あれ、それ、その、これ等は避ける
◎「名詞+し」の「し止め」は避ける
◎中八 (真ん中の七音字を八音字になっているもの)は、極力避ける。上五は六や七もOK、八もOKという作者・選者もいる。下五はきっちり五で決めて欲しいが六は仕方のない時もある。七・七・五や七・五・五はよく見られる形。だが、五・七・七は良しとしない人が多いと思われる
◎五七五だけでなく、七七句、八九句、九八句もある

◆本・雑誌の紹介があった。
・『パチンコ川柳』 池口呑歩編
 池口さんは被曝者で、上京しパチンコ店で働いていた。お客の紹介で国会図書館に就職した人
パチンコで立って会社で座り込み
手袋の右が落ちてるパチンコ屋
パチンコをパチャンというフランス人
・『川柳マガジン』    月刊誌
・『川柳研究』    月刊誌
・『番傘』    月刊誌
・『川柳展望』    季刊誌
自転車で逃げてならぬ鬼ごっこ
ぬれせんべい早く喰わねば乾き出す
 何でもない句にも、何もなさそうで何かあるのもあれば、何かありそうで何もないのもある。
・『子どものこころ五七五』 宇部功著
初心者も大人も子どもも同じ(盛岡の鶴彬を訪ねる旅で、お話を伺った方)
・『川柳東京』    月刊誌
・『川柳百色』    川柳マガジン100号記念川柳句集 単行本
糸垂れる短気眺めている呑気(八九の句)
五月雨を集めて流すエコトイレ
・『反戦・反核平和詩歌句文集大23集 いのち輝くあしたへ』
反戦・反核に特化したもので、1983年から毎年、近年は隔年に刊行している。俳句・短歌・詩・漢詩・
川柳・散文が収録されている。
・『沖縄(うちなー)を返せ 大田かつら句集』
沖縄戦や基地、政治問題をテーマにした時事川柳104句を収録
・『強制しないオムライス 植竹団扇川柳句集』

—————–以上です————
笠原眞弓