2018年6月句会報告

 6月28日、レイバーネット川柳班月例句会が池袋のエポック10(としま産業振興プラザ3F)で開かれました。今回は17人の方から兼題「声」に49句、自由吟に50句が寄せられました。句会参加者は6人、メールでの参加5人、計11人と選句し、兼題・自由吟ともに一人3句ずつを選びました。
 句会のあとで斗周さんの問題提起について短い時間ですが話し合いました。これについては、この報告の最後に紹介します。その成果として、今回から新企画<乱鬼龍のワンポイント>のコーナーがはじまります。
 7月の句会はお休みです。「反戦・平和」句集の投句締め切りが7月20日(金)、編集会議が7月26日(木)にあるため、句集への投句と編集に力を注ぐことにしました。
(報告:笑い茸)

兼題「声」(49句)

●5点句(1句)
もの言えば強制帰国 実習生      なずな 
 ⇒技能実習生が権利の声をあげられない実態をすばり。下5の一字空けは不要。空けなくても一気に読める。作者はこの句は空けたいと。「分かち書き」について論議が必要。

●4点句(2句)
AIが生きてますかと声をかけ     奧徒
 ⇒介護現場に導入されたAIが声をかけていく近未来を想像させる。それは介護ではない。そんな時代になりそうな恐ろしさ。AIが恐ろしいのではなく、この国と政治が恐ろしい。

社説よりずばり突いてる声の欄     笑い茸
 ⇒朝日新聞読者の声のこと。『朝日』だけではない。新聞の堕落、権力擁護の姿を鋭く。前から類句がある。

●3点句(2句)
友の声聞けど聞こえぬ民の声      斗周

 ⇒リズム感があっていい。権力者がこれでは困ります
声もなく被曝の森の命たち       なずな
 ⇒放射能に汚染されていく人間、動物、植物そのすべてを「森の命たち」としたのがいい。原発事故の汚染による被害はこれからますます深刻化していく。それを証明しているのが「森の命」たち。事実を知らない・声を上げられない現実が痛々しい。「声もなく」がよく効いている。

●2点句(1句)
民の声黒い法衣が遮音する       奧徒
 ⇒司法自ら人権侵害をやっているという事実。「声」があれば「音」は別の言葉でもよいような気がする。また「黒い」も必要かどうか。「黒」は抗えない力、悪も象徴する言葉として、入っていていいのでは?

●1点句(12句)
悪政へ声なき声の大波動        やせ蛙
 ⇒「大波動」に、これまでにない動きが感じられる。

靖国の霊もウソツケアベヤメロ     笑い茸
 ⇒アベには国のために死んでいった霊さえも怒っている。「ヤメロ」という命令形の言葉は使いたくない。
軍拡は声をひそめて南から       中仁也
 ⇒沖縄の島々から軍拡が進んでいる実態。「声をひそめて」にリアル感が。

密室は甘いことばと怒鳴る声      一志
 ⇒こんなことがおこなわれているのではと想像できる。

民衆の声にはならぬうめき声      やせ蛙
 ⇒深い洞察の一句。民衆の声は、声高な声ばかりではない。この国の中で最も虐げられている人々は、ただうめいている。

嘘つくと裏声になるウブなやつ     笑い茸
 ⇒観察の句。あるあると思わせる。ただしウブかどうか、疑問。アベも興奮すると時々見せる現象。

建設中官邸前に防音壁         一志
 ⇒本当なのと思った。本当のことと見えるところが怖い。

届かない左翼の声のワンパターン    一志
 ⇒自戒をこめて選んだ。「左翼」では漠然としている。

島しょ武装墓の下から唸り声      白眞弓
 ⇒沖縄戦で死んでいった人たちのいたたまれない怒り。

耳澄まし母子避難者の声声声      八金
 ⇒おとぎ話の「聞き耳頭巾」を思い出しました。それを被ると本当の声が聞こえてくる。頭巾はなくとも、心の耳をとぎすませれば聞こえてくる。

呻き声悲鳴も闇に捨てる国       中仁也
 ⇒ニュースにもならない国中にあふれている弱者の声。

雷声が縄のれんへと尻を押す      木根川八郎
 ⇒ちょっと飲みたい時に雷雨が来ると嬉しいよね。

●乱鬼龍選
悪政へ声なき声の大波動        やせ蛙
AIが生きてますかと声をかけ     奧徒
呻き声悲鳴も闇に捨てる国       中仁也

●選外
米朝を朝米という声を聞く
拡声器集音マイクの二刀流
国民の声は騒音野次とくい
官邸へ膿を明かせの声が降る
300万かすかな声が闇にある
わたしらの声聞け男ミートゥーを
黙らずに声上げないと無い事に
島人の声を届けよマスメディア
官邸に届かぬ声が山とある
サッカーの歓声ごとく国愛し
米朝の猫なで声と甘え声
いじめっ子の声を聞きたくありません
慰安婦の恨に答えぬのか政治
ニッポンと無邪気に声を出せと言い
爺様も詭弁が上手声なき声
声上げて初めてわかる嫌なこと
民の声蓋して独裁墓穴掘り
原発に遠慮しないぞ大ナマズ
声だけは発し中身の意味不明
声上げても声なき声にするメディア
観衆の声を非難し負けいくさ
与那国に入る日本の上目線
声なき声やむにやまれず声あげる
民の声聞こえぬふりしてアグラかき
議事堂に憤怒の声が日参す
過労死の遺族の声を無視決める
改ざんで自死の無念聞こえぬか
悪巧みゴルフ場には耳はなし
当然のように暴言まき散らす
財界の声ばかり聞く安倍総理
ウグイスの声を曇らす花粉症

自由吟(50句)

●6点句(1句)
高プロで搾りカジノでまた搾る     斗周
 ⇒安給与でこき使っておいて、その上賭博でまきあげるのが資本の正体。川柳の見本のような句。かるいリズム感がいい。

●5点句(1句)
外交に見せて逃げ込む専用機      中仁也
 ⇒うまい! あらゆることが政治のように見せてまともな政治でないというこの政権の典型例。政治全般に批判意識が希薄化している。

●4点句(1句)
内閣支持フェイクニュースのように聞く 乱鬼龍
 ⇒アベの支持率が伸びているなんて、冗談がきつい。フェイクだからと安心していてはいけないので…。世論調査の仕方によって違ってくる。世論調査を信じていない。

●3点句(1句)
万引の次は収賄家族かな        芒野
 ⇒ 映画に引っ掛けてうまく表現。収賄家族の方が先かもしれないが。金銭の授受がないと収賄にならない。

●2点句(1句)
再審をやめて判事の夏休み       斗周
 ⇒袴田事件の決定に対する皮肉、パンチが効いている。川柳らしいいい句。「やめて」は「断って」がいいかな。イメージはよくわかるのだが深刻な問題なんで、ちょっと軽すぎないか?

●1点句(13句)
日本に学ぶ世界の独裁者        笑い茸
 ⇒日本の独裁振りを言っている

苦しいよ疲れたよでも希望       里見羊
 ⇒この句には共感する人も多いだろう。ひねるのもいいけど、こういうストレートもまたいい。

入院し役にたったね皮下脂肪      里見羊
 ⇒普段は悪者扱いしていたがこんな一面もあるんだ。

残業が無いのではない代がない     笑い茸
 ⇒とぼけたところがいい、川柳的。耳から聞いてわかりにくい。

外交を米へ丸投げ買うリスク      木根川八郎
 ⇒流れがよくストレートに入ってくる句。

ガキ大将アベ人形を振り回す      白河真舟
 ⇒トランプが人形を振り回している一枚の漫画になる

移民とは言わぬ五年の使い捨て     奧徒
 ⇒技能実習生のしられていない実態。

トランプも今は応援したくなり     なずな

部下のウソ処分しましたハイおしまい  かぼす
 ⇒加計学園の記者会見。理事長の顔が目に浮かぶ。

解説者なぜか平和にケチをつけ     奧徒
 ⇒どれもこれもひどい解説者ばかり。平和になると困る人もいる。「なぜか」という三文字がこの句の命。

非核化は揺れる日本の地面から     芒野
 ⇒地震と原発。本当だね。

ウソという壁を塗り込む官庁街     白眞弓
 ⇒意味のとりにくい句。ウソという壁を立てて、次々ウソを塗りこんで何かを守っている様子。

ねぇぼうやホントにあるのよウソの国  かぼす
 ⇒ホントにおもしろい句。日本の状況をうまく表現している。

●乱鬼龍選
高プロで搾りカジノでまた搾る     斗周
残業が無いのではない代がない     笑い茸
外交に見せて逃げ込む専用機      中仁也

●選外
ロケットマン威風堂々外交マン
目黒駅目黒区内にありません
3Kの職場支える外国人
のぼせるな美男美女でも無い癖に
枚方か未曽有がいいね新元号
ニッポンの軍拡の果て沈没し
断捨離で来し方捨てて星の宴
独裁者会見だけはしおらしく
サッカーの試合予定で決議され
宮古島ウタキ壊すヤマト人
自分だけ守る最高司令官
沖縄の問題固定差別的
女房に振り回される大日本
年金も狙うカジノの骨太さ
北の国出るか将軍機関説
半島平和対中対露出番です
実通貨流出してる我が財布
地震皆原発を問い政治問い
アベニチダイどちらのウソがうまいかな
米国の裏書が無い核の傘
日大じゃ偉くなるほど嘘が下手
記憶にも記録にもないがある嘘
記憶にも記録にもないこの事実
三権の民へ背任仕放題
人の子も犬猫のごとくもぎ取られ
港区に品川駅はございます
集会でもらうビラなど散歩撒き
ディールから平和とび出すトランプ流
サッカーと拉致で安泰マスメディア
記者会見正体見たり孝太郎
歴史的三文役者の茶番劇
権力にあっかんべーと胸のすく

<乱鬼龍のワンポイント>
●「届かない左翼の声のワンパターン」(一志)
 リズムが悪い。声に出して読んでみるとそれがわかると思う。順序を入れ替えて「ワンパターン左翼の声が届かない」としてみたらどうか。作ったあとに何度も何度も推敲することが大事。
●「苦しいよ疲れたよでも希望」(里見羊)
 5・5・5になっていて定型が崩れている。無理やりにでも最初は定型の5・7・5にする努力が大事。「苦しいよもう疲れたよでも希望」でもいいが、「よ」がダブるので、「苦しいなもう疲れたよでも希望」としてみたらどうか。

【斗周さんの問題提起】
 『いま、たまたま見つけた田口麦彦氏の本を読んでいます。批評のない川柳、穿ちのない川柳はダメだと主張されている点で、時事句主体の私たちの進んでいる方向性に近いのではないかと思います。その中で、氏が題詠に批判的であるということを知りました。なるほどそういう意見もあるのか、と思いました。私たちも題詠主義で行ってますが、いつまでも同じやり方をしていないで、新しいアイデアを取り入れた句会および句会報告を考えてもよいのではないでしょうか。

 また、基本的に私たちの句会では、「いい句」を選んでおしまいです。いい句に対してはわずかに批評文がつくわけですが、選外句がどのような評価であったのか、まったく示されません(句会参加者以外にはわかりません)。いい句を鑑賞するのはもちろん大事ですが、入門段階にある人にとっては「なぜ私の句は選外だったのか」を知りたいことでしょう。またそれがわからないと、「いい句」を目指すための方向が見えてきません(私も、一泉さんや高鶴さんの講座でダメな句のどこがどうしてダメなのかを聞いて、初めて川柳に開眼しました)。教育的配慮で句会を開催することも必要ではないか。

 今のままのレイバーネット川柳班のやり方では、後進を育てることはできないと感じます。句の中身は現代的かもしれないけど、やり方自体は非常に保守的。たまにはガラッと変えてみてはいかがでしょうか。』

【句会参加者で話したこと】
 私たちは「兼題」と「自由吟」を三句ずつ募集していますが、初心者は「題」があったほうが作りやすいという観点から「兼題」も募集しています。だから「自由吟」だけにしないほうがいい。

 「なぜ私の句は選外だったのか」を知りたいのは句会参加者も同じです。句会への投句は毎回100句前後です。それを参加者が各自三句選び、それを整理して、高得点の句から選んだ人の理由を聞いていきます。ここにはメールで選句に参加した人の意見も紹介されていきます。この点の入った40前後の句の批評と意見交換は有意義で楽しい時間です。批評には物足りないまま進んでいく時間ですが、句会の大部分の時間がここに割かれます。

 さらに選外の句について、「なぜ自分は選ばなかったか」を各自に聴いていくことは18時から21時という部屋の制約から無理でしょう。句会の最後はいつも次回の日にちと兼題を決め、情報や意見交換は近くの店で行っているのが現状です。

 斗周さんの問題提起を受けて、今回の句会報告から<乱鬼龍のワンポイント>のコーナーを作り、投句された中から乱さんに選んでもらい、句作りのポイントを教えてもらえことにしました。結構きついことも言い合える川柳班、ガラッとはいかないまでも改善していきましょう。