2020年4月句会報告

4月のレイバーネット川柳班の句会は、COVID-19「非常事態宣言」により、会場が確保できなかったことから、メール句会となりました。つまり、投句された句を一覧にして川柳班員へ送付し、各自の選句を集計者に戻してもらいました。
その集計を投句者が確認後、いつもの報告の形にまとめました。
今回は、各自が評を打ち込んだので、長いものは失礼ながら少し短くしてすべて載せました。

今回の投句者は25人で、お久しぶりの方の他、新人も一人加わり、先月より2名多く参加です。兼題「命」は70句、自由句は69句と、多くなっています。選句参加者は15人と、最近のおよそ倍、最多です。

「命」の兼題では、COVID-19を題材にしたものが多くありました。アベノマスクは15句!「命」のトップ6点句は、さすが“レイバー”の面目躍如と思いました。

(報告=笠原)

★命(70句)

6点句(1)

・ワープアの軽い命の重い日々    乱鬼龍
⇒軽いいのちと重い労働の対比がいい。しかしよくあるテーマで新しい発見が欲しい
⇒最後まで放置される層が一番喫緊に支援が必要だと「軽重」で簡潔に表現されている
⇒非常事態では、弱い者が真っ先に影響を受けるという事実が良く表現できている
⇒ワーキングプアは命を軽んじられ、苦しい日常を強いられている。軽重の対比
⇒軽いと重いをうまく使いこなしている

5点句(1)

・投票は命の預け先と知る       蘭綺麗
⇒コロナ禍で実感したこと。県知事の無能無策、埼玉県民の命は軽い
⇒意に沿わないことだけでなく、政策が直接生存率に関わることが簡潔に伝わる
⇒まさに命の沙汰も自治体次第
⇒政治はだれがやっても同じという俗論があるが、悪政は人を殺し、救ってもくれない

4点句(1)

・致命傷いくら負っても喋る舌     笑い茸
⇒うんざりという皆の気持ちを代弁している
⇒モリカケ桜マスク、この1つでも辞職なのに、いまだに居座るずうずうしさ
⇒これでもかこれでもかのスキャンダルまみれ。「反社首相」の舌は今日も廻っている

3点句(2)

・相談へ四日耐えるも命懸け      木根川八郎
⇒全くナンセンスな指示である。医療を後退させてきたツケが今出ている
⇒検査させない非人道性を撃つ
⇒コロナ問題。この国の医療の実態を告発している

・電車乗り会社行くのも命がけ     一志
⇒庶民はこういうところでも命がけ。権力者にはわかるまい
⇒一見平凡な句に見えて、電車に乗る事が命がけという現実の怖ろしさをついている

2点句(5)

・碧い海アカバナー燃え 命どぅ宝   すなふきん
⇒心に沁みる句。“命どぅ宝”という言葉は、歴史の奥深さ、辺野古闘争にふさわしい
⇒アカバナーとはハイビスカスのこと。沖縄の美と命どう宝が結びついて詩的な名句

・命より支持率を見る支援策      斗周
⇒コロナ対策にみる安倍政権。どれも愚対策
⇒一国の首相が打ち出す新型コロナ対策のチープさが、ここに発している

・反骨のいのち燃やして老い払う    スナフキン
⇒追い払うに「老い」を払うともってきたところが面白い。ますますご活躍を!

・フトコロも命も軽いなあ友よ     乱鬼龍
⇒―飄々として、共感

・マスク二個いのち守れと配る国    今明
⇒恩着せがましくてチンケナ日本の権力者
⇒安倍首相の国民への思い?が出ている

1点句(15)
・我々に基地は要らない命くれ     里見羊
⇒コロナ自粛の中、東シナ海で軍事共同演習が。宮古、石垣の基地建設も続行中。沖縄
辺野古新基地建設現場では、警備会社のテイケイはマスクをしていない。
⇒まさにその通り

・自粛せよ命の補償自己責任      八金

・地球から見れば我らがウイルスか   芒野
⇒人間中心の見方をちょっと外すと新鮮

・仕方ない命大事と首切られ      笑い茸
⇒命大事と自粛した結果を、首切りという命に直結する言葉でまとめたところが面白い

・全世界無関係では生きられぬ     芒野

・この国はどうせ命も自己責任     奥徒
⇒自己責任という言葉で、われわれは政府の失策の尻拭いをさせられてきた

・命がけ医療現場にマスクなし     祐民
⇒日本は社会保障を大事にしなかった

・窓を開け地球のいのち吸う朝     白眞弓
⇒安倍政権のコロナ愚策下「生きている」を実感。“地球のいのち”の表現に救われる

・延命を込めて十万やっと出す     木根川八郎
⇒いのちで「延命」というのはこの句だけ。権力者にとっての命の正体がみえる

・とりあえず命のためといえば済む   春うらわ

・命がけ現場を特需と見る輩      坂巻フミエ
⇒医療関係者のいのちをかけたケアーも、金儲けの対象にしているのでは…。

・永らえたいのちに奢る吟醸酒     かずさ紀柳
⇒ほっこりできる句

・気がつけば命をかける仕事増え    春うらわ
⇒スーパーの従業員も命がけ。電車通勤の人はみな

・座り込むアベノウイルス断つ日まで  わかち愛
⇒必ず断つ。アベ達が倒れるまで

・保険屋は人の命で飯を食い      奥徒
⇒なるほど。私の命を生かしている糧の一部を食って生きている

乱鬼龍選

相談へ四日耐えるも命懸け      木根川八郎
投票は命の預け先と知る       蘭綺麗
致命傷いくら負っても喋る舌     笑い茸

選外句

花筏見送る人の2、3人
株価よりいつでも安い命の値
自助共助自粛頼みという命
命綱どこに埋もれた緒が見えず
当てどない難民船に命がけ
命には医薬が大事武器でない
経済よりいのちと言えば今コロナ
人命を救う首相の匙加減
武器買うが命に回す金はない
金より命命のための金も要り
税金の重さ命のこの軽さ
守れないアホノマスクで生命は
大切な命を救う救急車
三蜜の原発作業命がけ
経済といのち天秤かける安倍
ウイルスがCO2削減実現し
在庫なし安売りも返品もできぬもの
またあした明日を信じる人が言う
子ども用のマスクですかと問い合わせ
いのちより経済大事透けて見え
COVID-19今生の別れガラス越し
疾病か失業だけの選択肢
ヘアドネは女のいのちの分かちあい
過労死がめっきり減ったテレワーク
政権にとどめを刺しているコロナ
定年が伸びて削られてく命
高齢者生きながらえてコロナ撃つ
いのちさえ削らされてる税10%
命綱断たせて補償せぬ自粛
下々のいのちは軽し布マスク
海と畑あさこはうすのいのちなの
命運が絶望的な国家の愚
エステ行き生命線を延ばす妻
命とりゴテゴテノロノロ待ったなし
全国で増えてる謎の肺炎死
無関心やめて命が叫びだし
命がけ一番軽い安倍夫妻
マスクよりニンニクふたつ欲しかった
懸命にプロンプタ読む首相かな
国民の命忘れて胸算用
コロナ戦争命選別迫りくる
億万都市の営み感じる足の裏
祝われて生まれ呪われ死んでゆく
医療現場とっくに壊れていたんだな
芽吹いてる黄緑のいろいのち色

★自由句 69句

8点句   1

・民主主義あっという間に隔離され   一志
⇒うまい
⇒逆の見方が面白い
⇒緊急事態宣言。「自粛」で、互いに監視する社会が見られた。逆転の発想が面白い
⇒民主主義諸国が権利を制限。隔離されたのはウイルスではなく、民主主義だった
⇒心もとない民主主義だったが、この機会に民主主義のパワーアップを探りたい
⇒民主主義のもろい面をうまく描いている
⇒自粛、中止のオンパレード。「戦後民主主義」とは、こんな程度か、という悲喜劇

5点句   1

・マスクから二枚の舌がはみ出てる   駒田紋太
⇒戯画的な皮肉が効いている
⇒あの小さめのマスクならさもありなん。おぞましさ抜群の句です
⇒小さなアベノマスクではすぐバレる
⇒世界中で嘲笑の的のアベノマスク。マスクの句の中で、一番川柳の可笑しみがある句
⇒アベのマスクは小さすぎてアベの嘘がすぐわかる

4点句   2

・本物のバカ殿だけは生き残る     斗周
⇒そのとおり、アベを痛打
⇒志村けん。惜しまれます
⇒志村けんもメイドで苦笑いだ

・朝一のコーヒー恐る恐る嗅ぐ     J・ポンド
⇒次は自分が感染か
⇒毎日死の病の恐怖にさらされている様子が短い言葉で表されている
⇒匂いが分かれば大丈夫と、毎朝実行。生活者の実感がこもっている
⇒コロナウイルスに感染を心配し、あさのコーヒーの香りに一安心する毎日

3点句   3

・防護服足りなきゃ女子に縫わす国   蘭綺麗
⇒セクハラ・パワハラに気づかない男たち。嬉々として縫う女たち。国防婦人会?
⇒この国は、いつまでも男女格差が続く。社会の意識が変わってほしい

・海底の糠に釘刺す辺野古基地     白眞弓
⇒その通り! 糠に釘を「打つ」でなく「刺す」にしたところが辺野古らしい
⇒大手の会社が密かに工事から撤退するのに、菅や安倍らがまだやる異常さ
⇒辺野古問題を「糠に釘」とは、実にうまい表現。こういうのが川柳だ。秀句だ

・国会に無能無策のクラスター     なずな
⇒対応すべき問題は山のよう。なのに何もできない政治家をクラスターになぞらえた
⇒過半数が感染の恐ろしさ
⇒コロナで知られるようになった”クラスター” を使って、無能な議員連中を表現

2点句   3

・コロナ前コロナ後という時代分け   なずな
⇒時代の大きな転換期にいるという気付きの句
⇒「敗戦後」「3・11後」に続く「コロナ後」をどう生き、どう闘うか、問われている

・テレワーク雇用破壊のリハーサル   すなふきん
⇒成果主義となり、労働者の分断と手当の節約で、大手企業はこれ幸いと積極的。私のようなIT音痴は居場所がなくなるだろう
⇒コロナが終息したら元通りに働けると思いがち。医療崩壊も雇用破壊も、現政権のやりようだから、テレワークを甘くみるなと

・椿落つ羽田の空の大爆音       白眞弓
⇒庭の椿か、落ちた瞬間、過ぎ去っていく爆音。羽田新航路の低空飛行を「椿落つ」でうまく描いている。住んでいる家や土地の価値も落とされる。

1点句   9

・小さくて通気性良いアベマスク    今明
⇒おもしろい。安倍氏はこう言われても批判されているとは思わないかも
・削られた医療コロナがあぶり出し   笑い茸
⇒まさにその通り

・議員には密議密約密計も       笑い茸
⇒三密の密を「狭い」から「ひそかな、こっそりと」に変換させたところがミソ

・イクメンが増えてはじける子の笑顔  八金

・自粛する されど委縮はするものか   すなふきん
⇒自粛と委縮をうまく対比させている。音の対比も面白い

・ヤバい国実は自分が住んでいた    J・ポンド

・ドタバタの政治ドタバタ殺される   乱鬼龍
⇒まさしく。「ドタバタ」が効いている

・月一の句会もどかし世の動き     斗周
⇒日々めまぐるしく変わる情勢。今まで政治に関心なかった人も、ニュースに釘付け

・新標語欲しがりません終わるまで   一志
⇒コロナ戦において権力側が民の批判の芽を摘み取り、国民統合を図っていくことを的確に表現。日本丸の行方を見据え、命と向き合う民として生き抜かねばと気付かせる句

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乱鬼龍選

民主主義あっという間に隔離され   一志
コロナ前コロナ後という時代分け   なずな
海底の糠に釘刺す辺野古基地     白眞弓
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選外句
抗コロナ梅干だけの朝昼晩
テレワーク見通しないと糸電話
有り余る兵器に比べ医薬無し
星野源迷惑ですと言えなくて
クラスター原潜原発襲い来る
コロナ禍につぎの社会を見つけ出す
二千万無いが心は豊かです
人類に告ぐとコロナがやってきた
加齢臭指摘する妻未感染
密室で密議こらして機密保護
むだ使いアベノマスクという愚策
無責任家でくつろぎ国滅ぶ
奇策失策アベノマスクのいと小型
人々が気付くきっかけアベマスク
コロナより生活難の現実味
自主性が忖度になるこの日本
ダメマスク安倍の酷さを実体化
夫婦して危機管理なし国難に
隠蔽と自己保身だけ実行し
安倍マスク異物混入謝罪なし
急ぐのにジグソーパズル給付金
嘘隠しても愚かさ隠せぬ官僚たち
検査せずまたもやウソをまき散らす
そらきたぞ胃薬用意だ安倍マター
開門前万事を見ていた花吹雪
巨悪には小悪が陰にたむろする
酔っ払い痴ほうとの違いわからない
政治家は日本の髄までしゃぶる気か
コロナ禍が各国暴く展示会
君が代の音符はらりと散りゆく日
コロナ危機核兵器など役立たず
晴れたあさ静けさのなかしむ躯
一帯一路まさかコロナで制覇とは
肺炎か餓死かお好きに選べます
王様かアベノコラボは大炎上
国会はマスクも通す腐敗臭
政治家の口先透けるマスク越し
空母より病院船に改造を
戦闘機不要不急の代名詞
世界経済コロナが締める首根っこ
政策はモリカケサクラマスクです
ウイルスの陰でそろりと改憲案
キャスターもいまにリモート出演に
10万で生きていけると思うのか
不都合な質問排除する都知事
国民と聞いて気になる無神経
長生きも幸か不幸かわからない
わたくしの喜怒哀楽を知る鏡
咳き込んで嫌いな奴を遠ざける
棒読みとプロンプター見るの得意です

◆乱鬼龍講評
今月の「集句」の中では、「自由吟」に多くの佳句があったと思う。
「いのち」の句では、私が実際に選んだ句とは別に「候補作」としてチェックしたのは、以下になっています。
三密の原発作業命がけ
COVID-19今生の別れガラス越し
命綱断たせて補償せぬ自粛
命運が絶望的な国家の愚
マスク二個いのち守れと配る国
「自由句」では、
本物のバカ殿だけは生き残る
テレワーク見通しないと糸電話
コロナ禍につぎの社会を見つけ出す
マスクから二枚の舌がはみ出てる
無責任家でくつろぎ国滅ぶ
開門前万事を見ていた花吹雪
一帯一路まさかコロナで制覇とは
テレワーク雇用破壊のリハーサル
国会はマスクも通す腐敗臭
戦闘機不要不急の代名詞
国会に無能無策のクラスター
ウイルスの陰でそろりと改憲案
10万で生きていけると思うのか
新標語欲しがりません終わるまで

「文は人なり、句も人なり」そして「選も人なり」で、良くも悪くも、選者の全力量がそこに表れると思います。

◆斗周総評
ニュース記事の後追いのような、新鮮味のない句が多い気がした。みんなが知っていることを書いても川柳にはならない。発見がほしい。
密を蜜と書き違えるような基本的な推敲不足は困ったもの。さすがに最近は「安部」などという間違いはなくなってきたが。

以上