2020年5月句会報告

5月句会もメールによる句会となりました。今月の投句者は18人、兼題「布」46句、自由吟は51句でした。4月句会の参加者はこれまで最多の人数(投句者25人、兼題70句、自由吟69句)で賑わいました。今回は少しお休みの方がいて、選句参加者も前回より3人少ない12人でしたが、なずなさん、J・ポンドさんに高得点句が出ています。すなふきんさんも投句全6句に得点がありました。今回も長い評は少し短くさせていただきました。末尾に斗周さん、乱鬼龍さんからの講評を掲載しました。

(報告:笑い茸)

 

兼題「布」(46句)

5点句 (1句)

・ハッシュタグ布より先に行き渡り    J・ポンド

⇒タイムリーを二つ詠み込んだ。

⇒ネットが政治に力を及ぼした。「布より先に」は「マスクより先」とした方が明快だと思う。

⇒非常事態に見せた一強のお粗末さ。

⇒「定年延長」への反対世論が、これほど燃え上がるとは、ということをとらえて、巧みな表現と思う。

 

4点句 (1句)

・弾除けにマスクを縫って送り出す    すなふきん

⇒気持ちは戦時?

⇒千人針を彷彿とさせる今の世相を皮肉に見ている。

⇒危険と向き合わざるを得ない人に十分な装備も与えないのは日本の伝統か。

⇒コロナ禍の中の強行採決で徴兵制を政府は確実に考えている。酷いことが続く。

 

3点句 (2句)

・値崩れのうわさ聞くころ二枚着き    奥徒

⇒まったくあきれる。支持率ガタ落ち当たり前。

⇒鶴彬の本歌取りで、よくまとまっている。

⇒うまい! もう値崩れしているがまだ届かない。

 

・あの嫁にゃマスクでなくて猿轡     斗周

⇒ゴッドマザー洋子を思い浮かべ抱腹絶倒。

⇒アッキーのこととして一票。夫は猿轡でもだめだと思う。

 

2点句 (5句)

・宣言で戒厳令の布石打つ        すなふきん

⇒非常事態宣言にすら慣れてしまう恐ろしさ。

⇒コロナ騒動の中で、これは戒厳令の予行演習ではという声は、マスコミには出てこない。

 

・イクサ越え芭蕉布紡ぐオバーの手    すなふきん

⇒もうこれ以上,沖縄、宮古、八重山である石垣、与那国、竹富を苦しめないでほしい。

⇒オバーの皺くちゃの手から紡ぎ出される美しい芭蕉布。平和を希求する沖縄の魂を感じる句。

 

・重い日々軽い首相と布二枚       奥徒

⇒重軽を巧みに使って、私たちの日ごろの思いを言い得て妙。

⇒民の困窮、医療・保健所・学校・施設・中小の店舗・労働者等々の苦悩には無頓着な安倍首相の軽薄さが、さりげない言葉で表現されている。

 

・日の丸の財布裏地は星条旗       笑い茸

⇒財布から抜き放題の真実を鋭く。

 

・列島に基地原発のパッチワーク     なずな

⇒全国に危険が散りばめられている様子を見事に表現。

 

1点句 (11句)

・国会に座布団が舞う熱気なし       蘭綺麗

⇒与党の紋切型、すり替え、ごまかしの答弁にはあきれ果てるが、野党の切り

込みも弱い。そんな国会の状況を上手く表現している。

 

・縫製の少女の手にした賃金は      坂巻フミエ

⇒460億円もかけて不良品のマスクよりお金で保証して欲しい。

 

・なにを織る残りわずかの縦糸に      笑い茸

⇒人生の後半をどのようなデザインにするか悩む気持ちが画になって伝わりす。

 

・布マスク二枚で隠す二枚舌       奥徒

 

・CAにマスク縫わせて戦中化       芒野

⇒隣人監視や学徒動員も?

 

・濃厚な接触相手布団だけ        一志

⇒濃厚接触するなという強制の中で、布団を抱いて寝ている、という軽い笑い。

 

・白い布血で丸書いて汚す国       里見羊

⇒「血」と「汚す」が効いている。

 

・アベノマスクやがて歴博展示品     乱鬼龍

 

・無印良品妻手作りの布マスク      かずさ紀柳

⇒ほっこりする。

 

・この国は布一枚で身を守る       いりたまご

⇒国が頼りにならない国民の悲哀をうまく表現。

 

・横断幕民意は今日も街を行く      乱鬼龍

⇒デモの正当性、明るさ、力強さを感じさせる。

 

<乱鬼龍選>

宣言で戒厳令の布石打つ         すなふきん

濃厚な接触相手布団だけ         一志

ハッシュタグ布より先に行き渡り     J・ポンド

 

選外句

質よりも高値が売りの布マスク

リングでは投げタオルなく逃げ続け

今はもう布はいいから金をくれ

布でなく利権で出来たアベマスク

布製のものを疑う癖がつき

布オムツ昭和は遠くなりにけり

大風呂敷拡げ改憲畳みだす

大風呂敷の布目へコロナフリーパス

マスクより包帯ほしい往生際

壊憲の布石地ならしコロナ禍で

縫いつづけ技能実習眠れない

布マスクアベNOジョークギネス入り

布マスク丈夫なはずがボロボロだ

官給の桜印の布マスク

今年こそ虫を追い出す衣替え

一衣帯水コロナ警告してやまず

2枚のマスク歴史に刻む恥さらし

悪法は公布されずにコソコソと

汗でなく球児の無念ぬぐう布

安倍さんはカメラの外で布はずす

ぼろ雑巾10万円の生殺し

布だから雑巾ならば使えます

芭蕉布に織り込む平和ウチナンチュ

世界流行語大賞アベノマスク

モリカケ桜黒衣がホッとする幕間

コロナ禍で武器は山ほど財布カラ

 

<自由吟>(50句)

6点句 (1句)

・今だけは過疎を喜ぶ地方都市      なずな

⇒社会崩壊の現実をあらためて。

⇒少し違う視点から見たのがいい。

⇒「感染者数が描いた過疎化地図」とどちらにするか悩んだが、「今だけは」の上5句に、心情が読み込まれている。

⇒人の少ないことが安全の保障に。価値の転換が起きている。

 

4点句 (1句)

・杖ついて暴走止める元検事       祐民

⇒言いたいことはよくわかる。説明的すぎるのが難。

⇒「杖ついて」が効いている。

⇒元検事総長の危機意識から発する真摯な言葉は説得力がある。

 

3点句 (3句)

・ネットデモ政治は動くものと知り     乱鬼龍

⇒同感、共感。軽く詠んでいるところがいい。

⇒市民に希望を与えてくれた貴重な体験。アベになってから初めての彼の敗北。

⇒以外だったが希望があった。

 

・二十四時間戦えますかテレワーク     すなふきん

⇒実際、無限残業の世界。

⇒先日20代の若者(息子の親友)がテレワーク中に急逝し、この句がリアルに思えた。

⇒新しい働かせ方はいつも資本の方から出てくる。労働者からではない。

 

・土砂浴びるサンゴと耐えて座り込む   すなふきん

⇒動けないサンゴと動かない座り込みどちらも辺野古を守っています。

⇒コロナ禍なのに、沖縄も宮古も石垣も基地建設を進める異常な国家。

⇒辺野古問題をサンゴの立場から見るという視点は良いと思う。

 

2点句 (4句)

・在宅で国会見たら驚いた        芒野

⇒なかなか体験できない答弁のひどさ。

 

・沈む手に浮き輪渡さず申請書      笑い茸

⇒心のないお役所的のルーチン業務の情景が浮かぶ。

⇒わらをも掴む思いでアップアップしている民に、スピード感を連発する安倍首相と小池都知事の言葉ほど空虚に響くものはない。

 

・救急車たらい回しのサイレンか     なずな

⇒たらい回しは昔からあったが、特に今回は痛切。医療体制は充実させよと警告の句。

 

・ハッシュタグ一千万もひとりから    蘭綺麗

⇒「大河の流れも水の一滴から」というように、今回のネットデモも、ひとり、ひとりの結実であるという、正に「今」を、切りとって、うまいと思う。

 

1点句 (9句)

・要請だ補償はしない自腹切れ      すなふきん

⇒医療や社会保障無視して軍事費に莫大な予算をかける政府。

 

・終焉の二字が重たい資本主義      乱鬼龍

⇒その通り。でもいまがチャンス。放っておけば何もかわらない。

 

・雀荘が泣いて喜ぶお墨付き       J・ポンド

⇒検事長の失態をこのように皮肉るところがまさに川柳。

 

・テレワーク気分転換ツイデモで     一志

⇒時間が出来た人々の関心が政治に向いたことは画期的。

 

・悪政のパンデミックも二波三波     奥徒

⇒悪政のパンデミックこそが、まだ、まだ続いてくるだろうということを、うまくまとめている。

 

・ツイットを政府は自粛させ損ね     奥徒

⇒なるほどね。政府の想定外でした。

 

・忖度をしないツイッター手におえず   なずな

⇒これもネットの力。中八が惜しい。「しない」を「せぬ」とすれば定型に収まる。

 

・八割のおじさん見なくなったけど    一志

⇒専門家は都合のいい時だけ使われる。

 

・不要だし密だし違法賭けマージャン   芒野

 

<乱鬼龍選>

悪政のパンデミックも二波三波    奥徒

土砂浴びるサンゴと耐えて座り込む  すなふきん

ハッシュタグ一千万もひとりから   蘭綺麗

 

選外句

目詰まりかマスク十万届かない

ボロ兵器みんな買いますアベ日本

無為無策自粛警察産み落とし

感染者数が描いた過疎化地図

慢心が恣意的使うカタカナ語

二千円無くても生きてゆく覚悟

助けての声を所持金107円

次は廃案シェア広げようネットデモ

役人は延長民は再雇用

憂さ晴らす自粛警察正義面

食えるなら自粛をしたい重労働

爪隠し定年延長人質に

人でなく会社に同情する世間

手ぶらでは帰りませんと投票法

末期政権終息させたのはコロナ

弔鐘が聞こえてきたよ身内から

若者に怒りの連鎖ツイッターデモ

検察はさっさとヤツを逮捕して

悪法をコロナの陰で乱発し

コロナ戦争一つになれぬ碧い星

安倍語録国語試験に出してみよ

コロナ詐欺性善説はとうに死語

淀み空薫風アベを吹き飛ばせ

マージャンで検事振り込み勝ち逃す

桜消え医療現場にマスク無し

ウイルスが差別の虫を揺り起こす

本当はステイホームをやりたいが

巻き尺へもっと絞めてとメタボ腹

形変えアベノウイルス生き延びる

瀬戸際の類語教わる月二回

声あげよ委縮の壁を突き抜けて

総長の椅子賭けマージャンで転げ落ち

 

〈全体的感想〉

斗周

いかにも標語のような句が多かったという印象。自分の意見を主張するのが川柳だと勘違いしていると、えてしてそういうふうになってしまいがち。世の中をよく眺めて、誰も指摘していない事実はないかと探さなければよい川柳はできないと実感する。もちろん自分自身の反省を込めて。

 

乱鬼龍

「布」は、どうしても「アベノマスク」に関する句が多かったが、そうした同想句の中から、一歩抜け出る発想に努力することが大事。私の「候補作」としては、大風呂敷の布目へコロナフリーパス

 

縫いつづけ技能実習眠れない

なにを織る残りわずかの縦糸に

イクサ越え芭蕉布紡ぐオバーの手

2枚のマスク歴史に刻む恥さらし

列島に基地原発のパッチワーク

この国は布一枚で身を守る

 

自由吟は今回、なかなか良い「候補作」が揃った。

 

目詰まりかマスク十万届かない

要請だ補償はしない自腹切れ

在宅で国会見たら驚いた

慢心が恣意的使うカタカナ語

二十四時間戦えますかテレワーク

コロナ詐欺性善説はとうに死語

ウイルスが差別の虫を揺り起こす

本当はステイホームをやりたいが

 

「自由吟」という名称は「雑詠」の方が良いと言われてきているが、私も同感です。

以上